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ロルナの祈り

公開からはもう半年くらい経ってしまってますが、飯田橋ギンレイホールで見てきました。
結論としては、見ることができて
良かった!今のところ上半期見た中で1番かもしれない・・・
深い感動に包まれております。

あらすじとしては・・・
アルバニアからベルギーに移民としてやってきたロルナは、クリーニング屋で働くその裏で、偽装結婚をしている。偽装結婚の相手は麻薬中毒のクローディ。必要以上に頼ってくる彼には冷たいロルナだったが、あることをきっかけに不思議な感情が2人の間に生まれる。しかし、ベルギー国籍を取得した彼女を使って次に国籍売買を試みるブローカーのファビオはある計画を立てていた・・・というもの。

映画のイメージカラーは可愛らしいピンクですが、テーマは偽装結婚、麻薬中毒と重めだし、
ベルギーの町並みもゴツゴツした感じで、実はあまり可愛らしい雰囲気はない。
物語の初めの方のロルナとクローディの間もそれはそれは冷たいもので、ことさらに甘えてくるクローディをロルナは突き放すばかり。

でも、予告編でも流れていたとおり、ふとした瞬間から二人の間に愛情に近いものが生まれます。
ここまで、あぁー良いなぁーと思って見ていた私。
クローディ役のジェレミー・レニエが母性をくすぐる顔をしているので、こっちまでロルナの気持ちになってくるというのもあって。
中毒がひどくなったと言っては薬を買ってきてくれだの、入院のために代わりに電話をかけてくれだの。
抱きつかれ、すがられ、泣かれ、でも、それが落ち着いた後に「君がいるから耐えられる」と言われたら、そりゃロルナでなくても愛情が芽生えるがな。
しかしまぁ、そこはダルデンヌ兄弟、そんな陳腐なラブストーリーで終わるわけがない。
この後 事態が急転直下。観客はえぇぇーーっと置いてけぼりをくらいます。

私なんて、ここでちょっと腹が立ったくらい。
予告編は明るい感じだったけど、良いところだけを抜きすぎなんじゃないのぉー。暗くて単調な物語じゃない、と。

そんな風にプリプリと怒っていたけど、途中から涙が一筋。
ロルナの、彼女自身でも気付かない想いが言葉に表れていたことに気付いたら、急に。
何気ない言葉でこんな風に観客の感情を一気に溢れさせるなんて、ダルデンヌ兄弟、すごい。

そしてそこからはハラハラしながら画面を見守り、(サスペンスタッチでもあるので)最後の10分くらいのシーンに更に感動。
全体的に手触りは固い感じの映画なのですが、最後はまるで童話の世界のように、小さな閉じた暖かい世界で終わるのです。

最後の方はハラハラと涙が流れるばかり。
もちろんストーリー自体も良いのだけれど、どちらかというと、こんなに芳醇な映画を作り出したダルデンヌ兄弟に感動して。

先週末、作品のメッセージをラストシーンで主人公に言わせてしまっていた「インスタント沼」にブツブツと言っていたけれど、その逆をこんなに完璧にできる映画があるなんて。

「ロルナの祈り」のメッセージは、もはや一言では言えない、というか言葉で表すには勿体なさすぎる。
原作を忠実になぞった映画、誰もが同じ感情を味わうような映画、そんなものを軽く超えた本当の映画っていうのは、やっぱりこの世にあるものなのだな、と感動してしまいました。

私は最近、映画分析の講座みたいなのに通っていて、そこで映画文法的なものを教えてもらったりしているのですが、そういう意味でも本当にお手本のような映画でした。偽装結婚の主謀者であるファビオ、ロルナの恋人であるソコル、そして麻薬中毒のクローディ、この3人は鼻つまみ者である点では大して差はないのですが、ロルナが信頼を寄せているはずのファビオとソコルの方がお金に汚い。2人ともロルナの前で、まるで彼女を売り買いするようにお金のやりとりをする。そこでクローズアップされる札束。けど、そこで私たち観客の脳裏に思い出されるのは、しきりにロルナにお金を預けていたクローディの姿。そのお金は、偽装結婚によってもたらされたクローディ自身のものであるはずなのに、タバコを買うから10ユーロ、君のために夕食を作るから20ユーロと少額しか使わず、まるで母親に預けるようにロルナにお金を預けるクローディとファビオとソコルの対比が、意識することなく観客の脳裏に焼きついていて、それがまた後半のシーンの裏づけになっているんだよなぁ。。。

何というか、例えると「ロルナの祈り」は、一粒のマスカットを味わったかのような気持ち。
ハリウッド映画は例えるならAIBOで、「良くできてるなぁ」といつも思う。あの『アメリ』は例えるなら一流のショコラティエが作ったチョコレートのような出来の良さ。でも、それに対して「ロルナの祈り」は一粒のマスカットのよう。素朴で、皮をむくと意外に表面はザラザラとしていて、甘いとは限らず、少しすっぱかったりする。でも、加工食品や工業製品には絶対に出せない透き通った美しさ、一つの生物が持つ力強さを秘めている。考えれば私、最近 できあいの映画ばっかり見てたなぁ。久しぶりに本当の食べ物を、映画を味わえて、良かった。そんな風に思えた作品でした。

一応 ギンレイホールでは7月10日(金)まで、新文芸座では7月30日(木)だけやるようです。ややシネフィル向けなのかもしれないですが、よろしければ是非・・・!

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