女性を追ったドキュメンタリーも3本ほど見ました。
その1。「あんにょん由美香」。伝説のAV・ピンク映画女優である林由美香をテーマにしたドキュメンタリー。彼女はピンク映画を中心に200本近くの作品に出演し、柳下毅一郎氏をして「最後の映画女優」と言わしめた人
彼女はとても魅力的な人だったらしく、AV監督のカンパニー松尾氏や平野勝之氏と実際に恋愛関係にもなり、彼らによって重要な作品も残されている。ピンク映画として撮影された主演作品が絶賛され、「たまもの」と改題され一般劇場で上映されたことも有名。ただ、彼女は34歳の誕生日に自宅で亡くなってしまったんですよね。(自然死とのこと)
生きている本人を見ることができない今、そのドキュメンタリーとなれば見にいかなければ!と思って行ったのですが、面白かった。
そもそもこの作品、「あんにょんキムチ」という自らの出自をテーマにしたドキュメンタリーで若くして有名となった松江哲明監督作品。「あんにょん由美香」は、松江監督が姉のように憧れ・親しくしていた林由美香が亡くなってから、ふと目にした、彼女主演の「東京の人妻・純子」という韓国映画(?)を元に、彼女がなぜこの映画に出たのか、彼女とはどういう女性だったのかを追っていくドキュメンタリー。林由美香に何故こんなにも多くの監督が惹かれたのか(女優としても、また一人の女性としても)も興味深いが、同時に日本と韓国との性に対する意識の差や、映画作りに携わることの悲しさと素晴らしさも引き出されていて、何だか一粒で三度おいしい、みたいなドキュメンタリーなのです。
まぁ映画作りの方は置いておくとして、私が興味があった、林由美香の人となり・・・は、やっぱりものすごく興味深かった。何故男たちがあそこまで彼女を愛し、信奉するのか?そして彼女を忘れられないのか?
何だか、すごくあっけらかーんとした女性のように思えました、私には。スタッフさんの名前を覚えていたりされていたようなので、もちろんあっけらかんとしていただけではないと思う。ただ、何百本もピンク映画に出ているプロの女優さんとしての凄み、なのか、生来のもの、なのか、とにかく私が少ない情報から判断した林由美香は、男性がわーっと甘えたり、好きだ!と言ってみちゃったりしても身構えたりしない、上手い言い訳でやんわり断ったりしない、何というか、テニスのラリーで打ったら想像のつく角度から返ってくる(でもたまにおっと思う角度から返ってくる)みたいな。
私はラリーを続けているように見えて、実はものすごい形相で的確に打ち返そうとしてるんだよな。そういうのって自然じゃなくて、疲れるもんね。
その2。「イメルダ」。これは一番上に書いた私の欲求をものすごく満たしてくれた。というのも、あんにょん由美香はいかんせん本人が亡くなっているので片鱗しかわからないのだけれど、「イメルダ」は本人がどーんと出ているドキュメンタリーだから。
靴を集めまくり、庶民のお金を食い物にした女帝、悪女。彼女のイメージはそんな感じだったのですが、画面に現れた彼女はこれまたあっけらかんとしてました。あっけらかん、というとちょっと違うかもしれない。悪びれず堂々としていた、とでも言うべきかしら。マルコス氏と出会った若い頃の美しさはもちろん、今現在でも十分美しい。もちろん貫禄は出てきてしまったけれど、背が高く、仕立てと色彩センスの良い服を着こなす彼女は、もちろん、その洋服の元のお金は?と問いただしたくなる気持ちもあるけれど、やっぱり堂々としていて綺麗
彼女は自分の行動の理由について、自分のように貧しい生まれのものが、このように立派になったことを国民に表し、勇気を与えたいのだと言っていた。それ、たぶん本気。容姿でも、頭脳でも、人並み外れて優れたものを持った人が、周りの人を啓蒙したいと思う、そしてそれを行動に移すとき、あるものは本を書き、あるものは蜂起を促し、あるものは会社を興して財を成す。それが彼女の場合は、美しく着飾り庶民の前に出て、自分が正しいと思う行動を取ることだったのだと思う。彼女は、美は平和とつながると信じているから。
ドキュメンタリーは彼女を弾劾もせず、泣かせもせず淡々と進んでいくのだけれど、そのようなことがわかるにつれて、軽く唖然とする私。ある意味、正常な誇大妄想狂とでもいうべきか・・・確かに彼女ほど美しい顔、声、スタイル、色彩センスを持ったらそのように考えるものなのかもしれない。自分が美しく装い、自分が笑いかけることで人々が救われるのだと。ある意味 女優やモデルとも同じだ。ただ違うのは、彼女が時の権力者の妻だったというだけで。
彼女の屈託の無さを知って、あぁ、これは彼女たち夫婦を弾劾する文章をいくら読んでもピンと来ないだろうな、とつくづく思ったのでした。
その3。「ヨコハマメリー」。私はずっと横浜の方に住んでいたので、たまの休日は友達とよく関内に行った。そこで一度だけ白塗りの老婆、「メリーさん」を見たことがある。都市伝説だと思っていた人を現実に見た、最初で最後の経験。
そのメリーさんをドキュメントとして追ったと聞いたけど、映画館で見れなかったのが残念。ようやくDVDで見た。・・・メリーさんを追うだけでなく、当時 夜の街としてにぎわっていた黄金町の様子も描き出される。メリーさんを助けていたシャンソン歌手、メリーさんが行っていた喫茶店、美容室。少しずつ、彼女がどういう人物だったのかが描き出される。彼女はメリーさんと呼ばれる前は「皇后陛下」と呼ばれていたらしい。
私はたぶん、関内の「バーガーキング」の店内で彼女を見たのだと思うけど、そこは前述のシャンソン歌手とメリーさんが定期的に会う場所だったらしい。あぁ。歴史と歴史が重なる瞬間。私のちっぽけなこの人生も、このドキュメンタリーに刻まれたような人や街の歴史の中に、確実にあったのだ。・・・そういう意味では、女性の生き方を追ったつもりが、横浜を思い出して何だかしんみりするという結末に。このドキュメンタリーは、メリーさんと共に黄金町のドキュメンタリーでもあったのだ。
そして最後に。「イメルダ」は製作国が違いますが、「あんにょん由美香」も「ヨコハマメリー」も、私の同世代の男性が撮った作品。追われる女と、追う男と。同世代の男性がドキュメンタリー作家として活躍しているのもすごいなと思うし、彼らが追う女性たちも、追われるだけあってさすがな骨太人生。
はてさて、私は?
ドキュメンタリーも撮らず、さりとて追われるほどの濃い人生もない私。その事実に呆然としながらも今夜も眠りにつきたいと思います・・・